2017年の元旦は普段より1秒だけ長い

季節と暦を一致させるために平年より1日だけ長くなった年を閏年と呼びますが、より細かい時間の単位においても閏が存在します。2017年元旦には、8時59分60秒という”うるう秒”が挿入されました。情報通信研究機構から以下のようなプレスリリースが出されています。

「うるう秒挿入のお知らせ」

プレスリリースを参考に、この1秒間の調整がなぜ必要かを3行でまとめると次のようになります

  • 昔は1日の長さを地球の自転に対応させて決めていたが、自転速度は一定ではなく精度にも限界があった
  • 原子時計という技術によって時間をとても精密に測定できるようになったので、この方法で1日の長さを決めるようになった
  • これら2つの時間の決め方の間にはズレがあるため、ズレが1秒より大きくなりそうな場合は閏秒を挿入してズレを小さくする

一つ目のポイントは、かつては地球の自転に応じて1日の長さを決めていたということです。地球そのものを時計として扱うこの方法は、日の出や日の入りなどの日常生活に馴染んだ決め方と見なすことができ、とても有用です。ところが、地球の自転速度は様々な理由によって変動し、年によってわずかに異なるという問題がありました。それでもこの地球時計が最も精度の高い決定方法であるならば、1日の長さの定義を見直すこともなかったはずです。この手法による時間の測定精度は、3年間で1秒程度のずれに相当します。

二つ目のポイントは、原子時計による極めて高い精度での時間測定です。原子時計とは、原子が特定の周波数の光を吸収したり放出したりする性質を利用した時計の一種で、地球の自転を使った方法よりも1000倍高い精度で時間を測定できます。これは3000年間で1秒程度のずれに相当します。

三つ目のポイントは、時間の基準をどのように選ぶかということです。地球の自転による方法でも日常生活では全く支障がないように思えますが、時間の精度は情報通信やコンピュータの運用における正確さを左右する重要な量なので、高ければ高いほどよいと言えます。ここで問題になるのが、高精度の原子時計を使うことでこれまで採用していた地球時計とのずれが年々大きくなってしまうことです。

ふたつの時計はまったく異なる方法で機能するため、ずれを是正するにはどちらかの時間に補正を加えるしかありません。そこで導入されたのが閏秒というわけです。閏秒は、1972年から2017年までの35年間で27回実施されてきました。2年に1回以上のペースで補正が行われていると言えます。


ここまでが閏秒の概要ですが、ここから先は、関連する興味深い話題についてもう少し掘り下げたいと思います。

地球の自転速度はなぜ一定ではないのか?

地球時計の問題点は、様々な要因により地球の自転速度が一定でないというところにありました。この原因は月の引力や地球大気と地表との間の摩擦などとされていますが、長い年月をかけたゆっくりとした変動についてははっきりとしたことがわかっていないそうです。地球内部の深いところで起こっている変化、例えばマントルの運動や大きな地震などが関係しているという説もあるようです。長い目で見ると地球の自転は少しずつ遅くなっているそうですが、単純に遅くなり続けているわけではなく、早くなることもあり、要因の候補が多いために解明が難しい問題になっています。今後、多角的な観測と解析によって理解される日が来るかもしれません。

原子時計は具体的にはどのようなものか?

原子時計についてはもう少し詳しく説明してみたいと思います。

今日、広く使われている原子時計はセシウムという原子の超微細構造と呼ばれるエネルギー分裂を利用しています。原子は、それを構成する電子や原子核の相互作用や磁場など外的要因の影響で、エネルギー的に異なる様々な状態を取り得ることが知られています。異なる状態にある原子は、それぞれ特定の対応する波長の光を吸収したり、放出したりする性質を持っています。超微細構造は、電子と原子核の磁気モーメント間の相互作用による分裂です。なので、同じセシウム原子でも中性子の数が異なる同位体によってその大きさが異なり、原子時計に用いるものは質量数133の同位体です。

セシウム原子の蒸気を容器の中に発生させ、そこに磁場を与えることで特定の状態にある原子のみを分離します。分離した原子に適切な周波数のマイクロ波を当てることで、原子の超微細構造遷移を起こすことができます。ちょうど遷移が最も起こりやすくなったときのマイクロ波周波数が、超微細構造遷移の周波数ということになります。

周波数は時間の逆数の次元を持ちますので、1秒間に何回の遷移が起こったか、という形でセシウム原子を時計として利用することができます。セシウム時計は、91億9263万1770回の遷移が起こるための所要時間として1秒という時間を定義しています。

セシウムを使った原子時計は画期的な技術でしたが、現在はさらに進化した光格子時計という技術が開発されています。これは、光格子と呼ばれるレーザー光を使った原子の閉じ込め技術を応用したもので、セシウム原子時計の1000倍もの精度を達成する可能性さえあるそうです。

もはやここまでの精度となると通信やコンピュータの運用の水準さえも超えているように思えますが、時間をものすごい高精度で測定できるようになることで様々な恩恵があるようです。例えば、長さの単位であるメートルの基準は、かつてはメートル原器と呼ばれる可能な限り精巧に作った1メートルの長さのレールを使って定義されていました。メートル原器には時間経過と共にわずかながら伸び縮みするという問題がありましたが、現在では長さの基準もレーザー光を使った定義に置き換えられています。

参考文献

[1] http://jjy.nict.go.jp/QandA/reference/leapsec-addendum2015.html, 情報通信研究機構 時空標準研究室 日本標準時グループ, “うるう秒に関するQ&A”

[2] http://www2.nict.go.jp/sts/afs/One-Second.html, 情報通信研究機構 時空標準研究室 周波数標準グループ, “1秒の定義”